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【殿町レポート】iCell 心筋 x SONY セルモーションイメージングコラボセミナーを開催しました

2017年12月5日、6日の2日間にわたって、殿町コラボレーションラボラトリーにて、SONY セルモーションイメージングシステム SI 8000シリーズ (ソニーIP&S株式会社) とのコラボセミナーを開催しました。アカデミアの先生方や各企業の第一線でご活躍の研究者の皆さまにご参加いただきました。
1日目は、セルモーションイメージングシステム の全体像を説明した後、実際にラボでの測定方法のデモを行いました。また、コラボレーションルームにおいては、エッペンドルフのCellCuturePlateの紹介や、同じ殿町LICに入居しているバイオテックラボの提供する最新機器や実験施設見学も実施しました。
その後、静岡県立大学の黒川洵子教授をお迎えし、「ヒトiPS細胞を用いた次世代心毒性評価へ向けた基礎研究」についてご講演をいただきました。黒川先生は、奥深いテーマである薬物誘発性不整脈研究に、iPS細胞技術やin Silicoなどの最新の技術でアプローチされています。心毒性評価の基礎的な理論から最新の研究動向までをわかりやすく明快にご紹介いただきました。また、懇親会では、軽食を囲みながら、デモンストレーションについての質問や細胞培養についてなど、先生・担当者・ご参加者さまとでさまざまな意見交換を行いました。
2日目は、セルモーションイメージングシステムの基本的機能とデモデータの解析結果の解説を行いました。
殿町コラボレーションラボラトリーでは、今後もiCellと最新機器の情報提供の場をご提供するとともに、皆さまとのつながりを大事にしながら、ご研究の発展にお役にたつようなセミナーを開催してまいります。

セミナーハイライト

ヒトiPS細胞を用いた次世代心毒性評価へ向けた基礎研究
静岡県立大学 薬学部 黒川洵子教授

ヒトiPS細胞由来心筋細胞の観察では、実際のヒトの不整脈にみられる性質の反映がみられるという利点があります。しかし、機能としては未熟な(子供の)心臓の細胞にみられるような「自動拍動能」を残している点も知られています。この状態でE-4031(hergブロッカー)という薬剤の影響をみると、活動電位の延長は観察できますが、薬剤の高濃度域では拍動が止まるという現象が生じます。これは、自動能がない成人の心室筋とは異なる反応です。in Silicoモデルというコンピューターシミュレーションで解析すると、iPS細胞由来心筋細胞では、成人心筋に比べて、Ik1 チャネルの電流が1/10程度に少ないことが計測されました。これを元に、Ik1 チャネルを強制発現iPS由来心筋細胞を作ってみると、ヒト心室筋のように静止膜電位が安定し、高濃度域も含めた薬物の濃度依存性が確認できました。このように、in Silicoモデルでは細胞レベルの情報から臨床へのインパクトがシミュレーション予測しやすくなり、研究と臨床への橋渡しが容易となるという意義があります。
また、抗ガン剤による心筋収縮に与える慢性毒性が問題になっています。SI8000システムは、ビデオで撮影するだけで長期作用の観察に適したプラットフォームであるため、今後は抗ガン剤の慢性毒性評価系構築を本格的に行っていくことを考えています。
最近実施していることを少し紹介すると、iCell心筋の分化維持用培地を変えて、心房と心室をバラバラにすることにも成功しました。この結果をSI8000で撮影したところ、心房と心室の収縮性を維持していることがわかりました。これを活用すれば、心室・心房それぞれに効く薬を効率的に探索することが可能になり、実験結果のばらつきのひとつの解消法になるのではないかと考えています。将来的には疾患サンプルを使った病態評価にも応用していきます。

セルモーションイメージングシステム SI8000 シリーズCardioモデルの紹介
昨今、iCell 心筋細胞を用いた電気生理機能の解析に加えて、心収縮などの力学的機能解析を実施する試みが始まっています。SONYの動き解析システムは、ブラビアなどのAV機器で素早い動きに対応するために開発された独自の動画像処理技術が応用されており、非染色・非侵襲で力学機能のほか、さまざまな微細な動きを定量評価することが可能になりました。
心筋細胞の「動きをベクトル」で予測するという解析手法により、収縮と弛緩をカラーマップで可視化、速度を定量化します。さらに、シート化した心筋の拍動伝播も簡単に可視化が可能です。

SI8000 Cardio モデル X iCell 心筋 デモンストレーション
実験室では、播種済みのiCell Cardiomyocytes 2.0 を使用し、IsoproterenolとVerapamil に対する反応をSI8000 Cardioモデルにより、リアルタイムでの高速撮影・録画を行いました。Cardioモデルは、リアルタイム観察により、実験中に新たな発見が得られるという点が大きな魅力ですが、ソフトウェアにもソニーの特徴がふんだんに織り込まれている点も見逃せません。撮影面では、オートフォーカス調整・調光や事前設定による自動撮影などのソニーならではの繊細な工夫によりストレスなく観察を進めることができました。また、その後、実際に撮影画像解析を元に、Isoproterenol とVeramilに対しての拍動数と収縮・弛緩の動きを定量化・グラフ化したデータを参照しながら、参加者のみなさんとさまざまなディスカッションを行いました。


展示風景