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【殿町レポート】iCell® User’s Meeting 2018 を開催しました

2018年2月7日、殿町ライフイノベーションセンターにて、「iCell® User’s Meeting 2018」を開催しました。アカデミアの先生方や各企業の第一線でご活躍のiCell ユーザー・ 研究者の皆さまに多数ご参加いただきました。

当日は、iPS細胞由来心筋細胞の毒性評価のパイオニアである澤田光平先生、iPS技術を用いた神経疾患研究で数々の功績を生み続けている赤松和土先生、iPS細胞由来肝臓を始め、薬剤安全性評価用の肝細胞の基準を検討しておられる石田誠一先生の各分野を代表する先生方の最先端の研究に関するキーノートスピーチが行われました。
また、殿町コラボレーションラボラトリーにご協力いただいている評価機器メーカーである浜松ホトニクス株式会社、横河電機株式会社、株式会社スクラム、ノベルサイエンス株式会社のスペシャリストによる最新の測定法トピックスなどもご紹介しました。ポスター・展示ブースセッションでは、評価機器の展示説明に加え、米CDIからもiCellを用いたポスターを発表しディスカッションを行いました。また、その後は懇親会場に場を移し、日ごろの感謝の気持ちを込めて用意した軽食を囲みながら、iCell 製品の使用用途や今後取り組みたい評価法についての情報交換など大いに盛り上がりました。

殿町コラボレーションラボラトリーでは、iPS細胞技術を用いた創薬研究に携わる方々への情報発信を通じて、新たな研究のヒントやアイデアが生まれる場を今後もご提供してまいります。


ハイライト

Keynote 1「創薬研究における薬理・安全性評価モデルとしてのiPS細胞由来分化細胞」
― 澤田光平先生 東京大学 大学院薬学系研究科 ヒト細胞学寄付講座特任教授

2008年にエーザイで安全性部門の目玉として当時は日本に流通していなかった幹細胞由来心筋の使用を決めました。現在は、東京大学でiPS細胞由来分化細胞を用いた薬理評価機構と創薬応用の検討や東京大学ヒト細胞創薬評価拠点ネットワーク構想の枠組みでiPS創薬研究の土台作りを行っています。

http://www.u-tokyo.ac.jp/adm/fsi/ja/sdgs_project037.html

循環器作用をみる際には、ペースメーカー細胞、心房筋、心室筋の働きを検討します。現在のiPS細胞由来心筋細胞はそれぞれの細胞が混在しているため、各サブタイプ特異的に誘導する研究も進められています。心室筋については、QT延長評価議論が一段落して、抗がん剤評価系構築が考えられています。急性のみならず長期的な毒性などの複合的心毒性法などを新たに検討する必要があると考えています。

Keynote2「iPS細胞を用いた神経疾患の病態解析」
― 赤松和土先生 順天堂大学 大学院医学研究科 ゲノム・再生医療センター特任教授

従来は皮膚生検から得た線維芽細胞由来iPS細胞を3~4カ月かけて神経細胞へ分化誘導して研究をしていましたが、侵襲も大きい上、研究効率もよくありませんでした。2010年に末梢血からのiPS細胞樹立が報告されましたが、神経系への分化効率が悪い点が問題でした。我々は誘導方法を改良し、血球由来iPS 細胞からもニューロスフィアを短期間で効率的に分化誘導することに成功しました。これにより、患者さんから少ない侵襲でiPS細胞を樹立することが可能となり、神経疾患の病態解析を加速させる機会が広がったと考えています。また、最近では、ばらつきなく分化を加速する方法として、“CTraS(シトラス)-Chemically Transitional EB-like State) 誘導”という基盤技術を見出しました。さらに、パーキンソン病などの神経変性疾患者由来のiPS細胞株にCTraSを介したところ、従来よりも短期間で表現型を再現できることもわかりました。今後は、この技術を薬剤スクリーニングはもちろん安全な再生医療研究にも役立てていきます。

Keynote 3「in vitro 細胞アッセイからMPS (Microphysiological Systems)」への展開
― 石田誠一先生 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター
薬理部 第三室長

近年の医薬品開発では開発費の上昇と開発効率の低下に直面しており、産業としての費用対効果という観点と早期に良い新薬を待つ患者への貢献という観点での課題になっています。また、現在の承認前の安全性評価法にも限界があることが指摘されており、In vitro 試験系において、さらにはMPSを活用して早期に効率的に新薬を創出することが求められています。肝実質細胞の中でも、場所によって糖新生や尿素合成などの機能を担う部分と代謝・解凍系の酵素発現の高い部分があり、また、胆汁排泄機能もあることから非常に複雑な機能をもつため、培養器材の工夫での再現が試みられています。最近では、それに対応して肝臓の機能を模倣して一連の薬物動態(ADME)を一つのチップで再現することを目指し、MPSなどの複雑な培養系の活用検討を行うAMEDプロジェクトが始まっています。アカデミアが持っている様々なMPS関連技術と搭載細胞の提供を行い、1000単位の規模で製造したチップを製薬企業に提供して、評価系を構築していく構想です。その中では、腸肝循環という腸管で薬剤を吸収し、胆管から排出するという一連のプロセスのin vitro再現を今後数年で実現したいと考えています。将来的には、腸内細菌叢と薬物代謝や疾患恒常性のメカニズム解析などにも応用できるのではないかと考えています。

ポスター展示/ブースセッション
殿町ラボでは、お客様の実験をサポートする活動を行っておりますが、その中から、CSA-Hi心筋チームの高砂先生(第一三共RDノバーレ株式会社)に「Current Comprehensive in vitro Cardiac Safety Assessment Using Stem Cell Technology-The Second Stage: Ca transitent Platform」、Jiksak Bioengineering 代表の川田先生に「iCellを用いたNerve Organoid」について、ポスターでのご発表をいただきました。